教育資金や結婚・子育て資金の贈与制度②
2015年度の税制改正で新設された「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度。
その内容をみてみましょう。
「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度とは?
この制度は、
●20才以上50才未満の人が、結婚・子育て資金として贈与を受けるとき
●贈与をしてくれるのが、父母や祖父母など(直系尊属)なら
●最大1,000万円(結婚費用は300万円)までは贈与税が非課税となる
制度です。
今のところ、2015年4月1日から2021年3月31日までに贈与を受けた場合に適用されます。
(延長される可能性はあります。)
なお、2019年4月1日以降は、贈与を受ける前年の贈与を受ける人(受贈者)の合計所得金額が1,000万円を超えた場合は、この制度を利用することはできません。
利用時の注意点
「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度を使うときも、金融機関をよく選ぶという点は、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度の場合と同じく、注意が必要です。
(詳しくは、「教育資金や結婚・子育て資金の贈与制度①」をご覧ください。)
また、それ以外にも次の点に注意しましょう。
◆「結婚・子育て費用」の範囲に気をつける
贈与された資産は、「結婚・子育て費用」にあてる必要があります。
まず、「結婚費用」には、次のようなものがあります。
・挙式や結婚披露宴の費用
(入籍日の1年前以降に支払ったもの)
・新居の賃貸にかかる費用
(入籍日の前後1年以内に賃貸借契約を締結したもの。
また、賃貸借契約の締結後3年を経過する日までに支払ったもの)
・新居への引越し費用
(入籍日の前後1年以内に行ったもの)
次に、「子育て費用」には、次のようなものがあります。
○妊娠費用
・不妊治療の費用
・妊婦健診の費用
○出産費用
・分娩費、入院費など、出産のための入院から退院までにかかる費用
・産後ケアの費用
(出産後1年以内に支払ったもの。6泊分または7回分まで)
○育児費用
・未就学児の治療、予防接種、乳幼児健診、処方せんに基づく医療品の費用
・入園料、保育料、給食費、施設設備費、入園試験の検定料、行事への参加費など
(支払先は、保育園、幼稚園、認定こども園、ベビーシッター業者など)
妊娠や出産費用は、贈与を受ける人(受贈者)の妻や夫の分でも適用されます。
また、育児費用は未就学児までが対象となっています。
想定される結婚・子育て費用について、どこまでこの制度が使えるかを、あらかじめ確認しておくといいでしょう。
なお、結婚費用は300万円までとなっていますので、ご注意ください。
◆費用によって必要書類が違う
金融機関から資金を引き出すには、領収書等の提出が必要ですが、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度の場合は、それ以外にも書類が必要な場合があります。
具体的には、次のようなものも必要となります。
○結婚費用
・戸籍謄本など
(婚姻の事実と、入籍年月日の確認のため)
・費用の内容によっては、賃貸借契約書の写しや住民票の写し
○妊娠費用
・配偶者(妻や夫)の費用の場合、住民票の写しなど
(配偶者の氏名、続柄の確認のため)
○出産費用
・子どもの戸籍謄本や、母子健康手帳の写しなど
(出産の事実、年月日の確認のため)
・配偶者の費用の場合、住民票の写しなど
(配偶者の氏名、続柄の確認のため)
○育児費用
・住民票の写しや、子どもの戸籍謄本など
(子どもの氏名、生年月日、贈与を受けた人(受贈者)との続柄の確認のため)
◆50才までに使いきる
結婚・子育て資金口座の契約は、残高が0円となり契約を終了しよう!となった場合、または、贈与を受けた人(受贈者)の死亡以外では、受贈者が50才になると終了します。
受贈者が50才になった時点で、結婚・子育て資金口座に残金があると、その年に残金の贈与を受けたとみなされ、贈与税の対象となります。
いったん金融機関に資産を預けてしまうと、やはり贈与を止めたなどといって贈与した人が引き出すこともできませんので、実際に使うであろう金額を贈与してもらうようにしましょう。
◆相続対策として過信しない
「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度は、親や祖父母などの資産が多い場合に、親や祖父母などが亡くなった際に支払う相続税を減らすために使うケースもあります。
生前に資産の一部を子どもや孫などにあげてしまえば、死亡時の資産が減り、相続税が減る可能性があるためです。
でも、結婚・子育て資金口座を契約中に、贈与した人(贈与者)が亡くなると、贈与者の死亡時に残金があれば、相続税の対象となります。
そうなると、残金分の相続税は減らなかったという結果になることもあります。
なお、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度と「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度は、同時に使うことができますが、同じ領収書で両方から資金を引き出すことはできません。
もう一度、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度について、「教育資金や結婚・子育て資金の贈与制度①」で確認されてから、ご自身やお子様の将来設計を考え、それに合わせて制度を利用しましょう。
※初稿は、子どもが小さい「新40代」女性のためのwebマガジン「Prime mama」に掲載されています。
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