教育資金や結婚・子育て資金の贈与制度①
教育資金や結婚・子育て資金の援助が受けられると、ありがたいですよね。
父母や祖父母など(直系尊属)から金銭などを援助してもらえる場合には、
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度
や、
「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度
を使って、贈与税がかからずに援助を受取ることができます。
その内容を確認してみましょう。
そもそも、贈与とは?
贈与とは、経済的な価値がある財産を、人に無償であげることをいいます。
夫婦や親子間でも、無償であげると贈与となります。
贈与があると、原則として、1月~12月の1年間でもらった課税財産の合計が110万円を超えると、贈与税を支払うことになります。
贈与税は、同じく財産を得たときにかかる所得税や相続税と比べて、税額が高い傾向にあります。
なぜ非課税制度ができたの?
贈与税の税額が高いと、親や祖父母が子ども・孫のためにお金を出してあげたくても、「高い税金を払ってまでは…」となりがちです。
そこで、一定の金額までは贈与税を課税せず、親・祖父母の世代から若い世代にお金がわたるように、この2つの制度が創られました。
それでは、具体的に制度の内容をみていきましょう。
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度とは?
この制度は、
●30才未満の人が、教育資金として、預貯金などの贈与を受けるとき
●贈与をしてくれるのが、父母や祖父母など(直系尊属)なら
●最大1,500万円(学校など以外の者に支払う金銭は500万円)までは贈与税が非課税
となる制度です。
今のところ、2013年4月1日から2021年3月31日までの贈与について利用できます。
(延長される可能性はあります。)
なお、2019年4月1日以降は、贈与を受ける前年の贈与を受ける人(受贈者)の合計所得金額が1,000万円を超えた場合は、この制度を利用することはできません。
利用時の注意点
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度を利用するときは、次の点に注意しましょう。
◆金融機関をよく選ぶ
贈与された資産は、銀行などの金融機関に教育資金口座を開いて管理します。
教育資金口座は、1人1口座しか持てません。
資金の引き出しは金融機関の窓口で行う必要のあるところもありますので、贈与を受ける側の利用しやすいところをおススメします。
どの金融機関を利用するか、慎重に選びましょう。
◆「教育費」の範囲に気をつける
贈与された資産は、「学校」などに「教育費」として直接支払う費用にあてる必要があります。
まず、「学校」とは、学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、専修学校・各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園・保育所などをいいます。
次に、「教育費」とは、次のようなものとなります。
○学校などに対して直接支払われる費用
・入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、入学(入園)試験の検定料など
・学用品費、修学旅行費、学校給食費など学校での教育に伴って必要な費用など
○学校など以外の者に対して直接支払われる費用
※・学習塾、そろばんなどの教育に関するものの月謝、施設使用料、物品代など
※・ スポーツや、ピアノなど文化芸術活動、その他教養向上のための指導料や物品代など
・学校教育に必要と学校などが認めたもの
・通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費
(※については、2019年7月1日以後に支払われるもので、贈与を受ける側(受贈者)が23 才に達した日の翌日以後に支払われるものについては、原則として不可となりました。
認められるのは、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限られます。)
習い事や部活動、自動車学校の費用など、対象になる可能性のあるものは多くあります。
子どもにかかる費用があれば、その都度、対象にならないか調べてみるとよいでしょう。
ただし、学校など以外に支払う費用は500万円までとなっていまので、ご注意ください。
◆領収書などを保管する
実際に教育費を支払ったときは、領収書などを金融機関に提出し、金融機関からその金額を受取ります。
教育費を支出したら、必ず領収書を保管しておきましょう。
領収書が発行されない場合などは、
①支払日付
②金額
③摘要(支払内容)
④支払者(宛名)
⑤支払先の氏名(名称)
⑥支払先の住所(所在地)
が分かるものであれば、領収書の代わりとして認められる場合もあります。
たとえば、クレジットカードで支払った場合は「クレジットカードの利用明細書」+「実際に引き落とされたことが確認できる通帳のコピー」など、複数の書類で領収書の代わりとなるケースもあります。
詳しくは、教育資金口座を開設する金融機関に確認しましょう。
◆教育資金口座の契約が終了するまでに資金を使いきる
教育資金口座の契約は、残高が0円となり契約を終了しよう!となった場合、または、贈与を受けた人(受贈者)の死亡以外では、原則として、受贈者が30才になると終了します。
30才になった後に、教育資金口座に残金があると、その年に残金の贈与を受けたとみなされ、贈与税の対象となります。
いったん金融機関に資産を預けてしまうと、やはり贈与を止めたなどといって贈与した人が引き出すこともできませんので、実際に使うであろう金額を贈与してもらうようにしましょう。
なお、2019年7月1日からは、30才以降でも、学校などに在学中、または、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合は、最長で40才になる前までは、教育資金口座の契約を継続できるようになりました。
ただし、これらの場合に該当する旨を、毎年、取扱金融機関に届け出る必要がありますので、注意しましょう。
◆相続対策として過信しない
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度は、親や祖父母などの資産が多い場合に、親や祖父母などが亡くなった際に支払う相続税を減らすために使うケースもあります。
生前に資産の一部を子どもや孫などにあげてしまえば、死亡時の資産が減り、相続税が減る可能性があるためです。
でも、教育資金口座を契約中に、贈与した人(贈与者)が亡くなると、㋐~㋓すべてに該当する場合は、贈与者の死亡時の残金の一部または全部が相続税の対象となります。
そうなると、その分の相続税は減らなかったという結果になることもあります。
㋐ 2019年4月1日以降に、この制度を使って贈与を受けた資金がある場合
(それ以前から教育資金口座を契約中で、追加で贈与を受けた場合も含む)
㋑ 贈与者の死亡前3年以内に、この制度を使って贈与を受けた資金がある場合
㋒ ㋑の金額よりも、贈与者の死亡前3年以内の「教育費」が少ない場合
㋓ 贈与者の死亡時に、受贈者が下記のどれにもあたらない場合
・23才未満
・学校などに在学中(証明書類が必要)
・教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講中(証明書類が必要)
「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」制度については、教育資金や結婚・子育て資金の贈与制度②でご説明します。
※初稿は、子どもが小さい「新40代」女性のためのwebマガジン「Prime mama」に掲載されています。
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